創業者の思い

酒屋での学びが原点でした。親の代から営んでいた酒屋が出発点でした。
当初、蔵元（生産者）と愛飲家や飲食店をつなぐ酒の専門店を営んでおりました。
お客さまの要望に合った銘柄を提供し、生産者の想いをしっかり伝える。単にモノを売るだけではなく、人と人とをつなぎ作り手の想いを伝えることこそが自分の使命、仕事だと思っておりました。

正直初めは、介護なんて大嫌いでした。いろんな環境の変化、昨今の情勢の変化もあり、前職の酒屋をたたまざるを得なくなり、さて今から何をしていくか迷っている中、縁があって介護の世界に飛び込む機会を持つことができました。

しかし、知識も情報もない全くの素人の私が、介護に持った最初の印象は最悪でした。
『きたない』『きつい』『希望がない』
身内から相談を受けた時も自分が働いている施設へ入所を勧めることができなかったとき、いったい自分は何をしているのか、自分の仕事は何なのか、と自己嫌悪に陥りました。

そんな時、自分の祖母が入所した老人ホームを訪れました。自分の働く施設を比べて何かが違う、お世話する内容は同じようなのに…
いったい何が違うんだろう？

笑顔が人と人をつないでいました。その違いは、働く人の『想い』にありました。
その施設はあたたかいのです。同じように介護をしていても、声のトーンや顔の明るさが違います。

人を尊敬し敬う心…
楽しく笑顔にあふれた介護の現場…
相手を思いやる気持ちが伝わる施設…

人と人とをつなぎ、希望や要望に応え、想いをこめ伝えることは、どこでもどんな仕事でも、同じだと気付かされました。
今から思えば、ごくあたりまえの作業をしていただけでそこに想いがない、そんな介護をしていたのかもしれません。

あたりまえのことほど見過ごしがちです。
でもそれこそが本当に大切なことなのだと痛感しました。
他の施設にできて自分にできないわけがない…自分が誰にでも胸を張ってお世話をできる施設にしたい…大切なひとに自分が働く施設にこそ入所してほしい…人としてのあたりまえを最後まで全うできる場をつくりたい…

私はその思いのもと、介護と向き合い、ライフワークとして『アンリ』を立ち上げました。

人生の秋を最高のシーズンにするために。人は年齢を重ねると、薄皮をはがされるように、少しずつ機能を失います。心身ともに変化していくその過程を受け止めることは、容易ではありません。
できないことを数えたら、いらだちや焦り、絶望しか見えてこないでしょう。

でもそれは、今の表面だけしか見ていない話。
その人の過ごした時間をまるごと受けとめると、違った景色が見えてきます。
それぞれのご利用者様にも長く積み重ねた歴史があるのです。

介護は、これまで生きてきた証をまるごと受けとめ、共感し、心と体が少しずつ身軽になっていく利用者の方々の長い秋のシーズンを、笑顔で支えていくことだと思っております。
介護こそ人生の終焉まで見届ける究極のサービス業だと考えます。

そして、お世話するわたしたち介護者もまた、人生の秋を過ぎようとする大先輩たちの姿から、自らの生き方を顧み、受け止める機会を与えられているのです。

介護という職を通じて人と出会えたことに感謝し、人の歩んできた道をまるごと受けとめ、人としてのあたりまえを最後まで全うする。アンリは、ご利用者様とご家族様、そして介護者がひとつになって、生きようとする勇気を希望を支える場でありたいと願っています。